去る7月、ウブロのCEOジュリアン・トルナーレ氏が来日した。一昨年の就任以来、ブランドの新たな可能性を模索してきた同氏のもと、ウブロはいよいよ次なるフェーズへと歩みを進めている。折りしも東京は鬱陶しい梅雨が開け、いよいよ夏本番。新たな時代を迎えたウブロの熱気が、静かに広がり始めている。

ジュリアン・トルナーレ氏は時計業界でも長いキャリアを持ち、特に2017年にCEOに就任したゼニスではブランドをさらなる成功に導いた。その後、タグ・ホイヤーを経て、ウブロへ。老舗ブランドで革新を推し進めてきたその目に、ウブロはどのように映ったのだろうか。


「創業から46年ですから歴史的にはけっして長くないブランドですね。でもこの短期間で成し遂げたことはブランドとしてだけでなく、時計の歴史にとっても画期的だったと思います。創業者カルロ・クロッコ氏から始まり、ジャン-クロード・ビバー氏との出会いによって、クリエイティビティと革新性、新素材のパイオニアという地位を確立し、大きな成功を収めました。そして従来の時計にはなかったマーケティングもウブロの強みといえるでしょう」

しかし、とトルナーレ氏は語気を強める。

「一方でマーケティング重視のブランドと見られる傾向もあり、やはりマニュファクチュールの本質をより確立し、さらに高みに押し上げていきたい。そのために自社開発・製造ムーブメントに注力し、細部や仕上げのレベルをさらに上げていますし、信頼性を担保する『5+5』年保証(2026年1月1日より開始された長期保証サービス)も導入しました」


ビバー氏の参画によって「フュージョン(融合)」の概念をより進化させ、ウブロは時計業界に新風を吹き込んだ。そして20余年を経て、時計を取り巻く環境が変わるいま、ウブロに何が求められているのか。

「人々は多くの情報をSNSやインターネットで得るようになり、私たちもこうした変化に対応しなければなりません。だからこそ時計を手にした時に、高い品質であることを実感していただきたいのです。クオリティこそがリアルです。ウブロがユニークな点は、イタリア人のクロッコ氏によって創設され、チャーミングでグラマラスでデザインに優れるイタリアならではのテイストを取り入れつつ、スイス時計の高い品質や技術を併せ持っているところです。まさにフュージョンという、異なる文化の融合がブランドの源流にあり、そうした他とは一味違う独自の個性が変わらず求められていると思います」

スイス時計を代表する老舗ブランドと同じ路線を歩むつもりはないし、目指す方向ではないと断言する。

「最高品質を追求しつつ、他とは違う時計作りを実現できるブランドは限られています。だからこそ人々は“何か違うもの”を求めてウブロを手にするのでしょう。顧客はフォロワーではなく、リーダーでありたいと願っているのです。他とは違う存在になりたい。それこそが私たちの提供するものなのです」